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「患者のための医療」へ戻る 医療判例ダイジェスト Digest(2003年1月〜2003年3月分 43件*) 堀 康司(弁護士) ■1 ABO血液型不適合生体腎移植後にレシピエントが肺水腫で死亡したこと について、移植腎の機能が即時に得られていないにも関わらず術後に 過量な輸液を実施した過失を認めた事例 ●H12.2.28東京地裁判決 一部認容・控訴(後原判決変更・確定) 判例タイムズ1108-230 ●当事者 患 者:20歳代男性 医療機関:東京医科大学八王子医療センター ■2 出生した児に脳性麻痺が残存したことについて、分娩監視に問題は なかったと判断した事例 ●H12.4.21名古屋地裁判決 請求棄却・控訴(後和解) 判例タイムズ1109-221 ●当事者 患 者:新生児(男児) 医療機関:東海旅客鉄道株式会社開設の病院 ■3 未破裂脳動脈瘤クリッピング術後に後遺症が生じたことについて、 静脈性還流障害のリスクが予想される架橋静脈を切断してまで クリッピングを行う必要性はなかったとして、適応のない手術を実施 した過失を認めた事例 ●H12.5.31東京地裁判決 一部認容・確定 判例タイムズ1109-214 ●当事者 患 者:40歳代女性 医療機関:学校法人順天堂大学開設の病院(文京区内) ■4 双胎第二子の分娩の際に臍帯が脱出して児が死亡したことについて、 先進部を進入・固定させた上で先進部が骨盤腔内から挙上しないよう 注意して人工破膜すべき義務を怠ったとされた事例 ●H12.7.3名古屋地裁判決 一部認容・確定 判例タイムズ1109-209 ●当事者 患 者:新生児(男児) 医療機関:名古屋市立緑市民病院 ■5 子宮頸管熟化剤マイリスの投与によって以前にアレルギー様の症状が 見られていたにも関わらず、破水後にマイリスを投与してショックとなり、 児に重度の障害が残り、後に死亡したことについて、マイリス再投与を 回避しなかった過失等を認めた事例 ●H12.8.25佐賀地裁判決 一部認容・確定 判例タイムズ1106-202 ●当事者 患 者:新生児(女児) 医療機関:医療法人開設の診療所 ■6 未破裂脳動脈瘤のクリッピング術後に脳梗塞を発症したことについて、 クリッピング時に動脈瘤基部以外の血管を挟んだ過失及びキンク(ねじれ) の有無の確認を怠った過失を認めた事例 ●H12.9.8京都地裁判決 一部認容・確定 判例タイムズ1106-196 ●当事者 患 者:60歳代女性 医療機関:医療法人相馬病院 ■7 陰嚢部痛を訴えた男児が精索捻転症で左睾丸を喪失したことについて、 泌尿器科専門医への転医勧告を怠った過失を認めた事例 ●H12.9.18名古屋地裁判決 一部認容・確定 判例タイムズ1110-186 ●当事者 患 者:男児 医療機関:外科、内科及び消化器内科を標榜する個人診療所 ■8 高速カッターによる受傷部に金属片が残置されて蜂窩織炎が生じたことに ついて、受傷部の異物の有無の確認を怠った過失を認めた事例 ●H12.9.28 横浜地裁判決 一部認容・控訴(後和解) 判例タイムズ1105-190 ●当事者 患 者:男性 医療機関:医療法人社団和乃会開設の病院 ■9 左陰嚢部痛で入院した男児が精巣壊死に至ったことについて、 病院に過失はないと判断した事例 ●H12.10.11岡山地裁判決 請求棄却・控訴(後取下) 判例タイムズ1109-202 ●当事者 患 者:10歳代男性 医療機関:総合病院岡山市立市民病院 ■10 脳梗塞で入院中の患者が同室の患者に角材で殴打されて死亡したことについて、 加害患者の精神分裂病の再燃に対する措置が不十分であったとして病院の 安全配慮義務違反を認めた事例 ●H12.10.16大津地裁判決 一部認容・確定 判例タイムズ1107-277 ●当事者 患 者:60歳代男性 医療機関:医療法人社団同仁会開設の病院 ■11 顎関節症の治療にあたってフルマウスリハビリテーションに関する説明が 不足した事例 ●H12.12.8東京地裁判決 一部認容・控訴(後和解) 判例タイムズ1108-225 ●当事者 患 者:女性 医療機関:歯科個人診療所 ■12 親子間の生体腎移植後にレシピエント(子)が死亡した場合に、 ドナー(親)は、親としての立場を離れて臓器の喪失それ自体の賠償を 求めることはできないとされた事例 ●H13.2.6東京高裁判決 原判決変更・確定 判例タイムズ1109-198 ●当事者 患 者:生体腎移植ドナー 医療機関:東京医科大学八王子医療センター ■13 精神病院に入院した患者について、自殺防止のための措置に落ち度があり、 かつ、それまで受診してきた他院の医師にも診断の誤りがあったとして、 自殺回避可能性を失ったことについての慰謝料が認められた事例 ●H13.7.19東京高裁判決 原審一部変更・確定 判例時報1777-50 (本誌1巻3号p85に既掲載) ■14 髄芽腫摘出術後にMRSAによる化膿性髄膜炎を発症し、化学療法の開始が遅れて 死亡したことについて、創部被覆や看護師らの手指消毒が不十分だった過失 によってMRSA感染が生じたと認定した事例 ●H13.10.30大阪地裁判決 一部認容・確定 判例タイムズ1106-187 ●当事者 患 者:3歳男児 医療機関:枚方市立枚方市民病院 ■15 心臓バイパス術後、カンジダ菌に感染した患者の真菌性眼内炎の発見が 遅れたため、両眼失明に至った事例 ●H13.12.19 名古屋地方裁判所判決 一部認容・控訴 判例時報1802-116 ●当事者 患 者:50歳代男性 医療機関:岐阜大学医学部附属病院 (本誌1巻3号p284に既掲載) ■16 抜髄及び臼歯部へのメタルボンドの使用に関する説明義務違反が 認められなかった事例 ●H13.12.20東京地裁判決 請求棄却・確定 判例タイムズ1106-182 ●当事者 原 告:女性 被 告:個人歯科診療所 ■17 大腿動脈カテーテル抜去部に約15時間にわたって砂嚢による圧迫止血を 行った結果、患者が肺塞栓に陥ったことについて、平成元年当時の状況 に照らして止血方法は不合理ではなかったとした事例 ●H14.1.29東京高裁判決 控訴棄却・上告、上告受理申立(後上告棄却、上告不受理) 判例タイムズ1107-258 ●当事者 患 者:60歳代女性 医療機関:静岡市立静岡病院 ■18 右内頸動脈の未破裂動脈瘤のクリッピング術後に右前脈絡叢動脈閉塞による 脳梗塞が生じたことについて、クリップを複数回にわたってかけ直したという 手技上の過失があるとされた事例 ●H14.2.18名古屋地裁判決 一部認容(控訴) 判例時報1808-85 ●当事者 患者:50歳代男性 医療機関:春日井市民病院 (本誌1巻3号p90に既掲載) ■19 スティーブンス・ジョンソン症候群の患者が二次感染を起こして死亡したこと について、緑膿菌感染が疑われたにも関わらず起炎菌の同定のための検査や 経験的抗菌治療、入浴療法等を実施しなかった過失を認めた事例 ●H14.5.9福岡高裁判決 原判決一部変更(上告受理申立) 判例時報1803-37 ●当事者 患 者:60歳代女性 医療機関:大分県立病院 ■20 臨床検査技師が患者の左手首から採血した際に注射針によって左橈骨神経知覚枝 が損傷したことについて、肘部での採血に努めず、かつ痛みの訴えがあったのに 採血を中止しなかった過失があるとした事例 ●H14.7.9福岡地裁小倉支部 一部認容 ※ ●当事者 患 者:40歳代美容師 医療機関:財団法人の開設する病院 ■21 非加熱濃縮血液凝固第IX因子製剤クリスマシンを、加熱製剤による対策が採られた 後にも虚偽宣伝を行いながら在庫の販売を継続し、患者をエイズで死亡させた ことについて、民事上の和解の成立等を理由に、実刑判決を命じた原判決の判断を 維持しつつ刑期を若干短縮した事例 ●H14.8.21大阪高裁判決 原判決破棄・自判(上告) 判例時報1804-147 ●当事者 被告人:M(当時ミドリ十字社長)S(当時ミドリ十字副社長兼研究本部長) 被害者:男性 ■22 末期肺癌患者に対する告知をしない場合には、家族に対する告知を検討すべき であったと判断された事例 ●H14.9.24 最高裁第3小法廷判決 上告棄却・確定 判例時報1803-28 ●当事者 患 者:70歳代男性 医療機関:秋田県成人病医療センター (本誌1巻4号p94にて既掲載) ■23 分娩後、胎盤の剥離前に臍帯を牽引して胎盤を娩出させようと試みたことで 子宮内反症を発症させた上、内反した子宮を子宮筋腫と誤認して整復術を怠ったため、 子宮全摘に至ったことについて、医師の責任を認めた事例 ●H14.9.30千葉地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:20歳代女性 医療機関:私立産科診療所 ■24 大腿骨骨折の観血整復固定術の翌日に肺動脈血栓塞栓症を発症して死亡した ことについて、医療機関に責任はないとした事例 ●H14.11.26 岡山地裁判決 請求棄却 ※ ●当事者 患 者:60歳代男性 医療機関:個人病院 ■25 セフェム系抗生剤アジセフによる薬剤性肺炎で患者が死亡したことについて、 起炎菌も同定しないまま添付文書の記載を無視してアジセフを長期間連用した上、 胸部X線写真の読影が遅れた上、肺炎に対して血液ガス分析やステロイドパルス療法 を実施しなかったことを過失とした事例 ●H14.11.27奈良地裁葛城支部判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:80歳代男性 医療機関:私立病院 ■26 汎副鼻腔根本術において篩骨洞骨隔壁を鼻内から上向き鋭匙鼻鉗子でねじ切った 際に後篩骨動脈が損傷されて大出血を起こし、損傷された硬膜から脳内に血液が 流入して左半身不随が残存したことについて、截除鉗子を用いて骨隔壁を切除すべき 義務に違反した過失を認めた事例 ●H14.11.29神戸地裁判決 請求認容 ※ ●当事者 患 者:60歳代男性 医療機関:病院 ■27 出生後3日目にB群溶連菌による早発型敗血症及び髄膜炎に罹患して脳性麻痺 が残存したことについて、転院先照会のための架電時期に関する診療録の記載は 虚偽であり、抗生剤投与に関する記載は証拠保全後に追記されたものであると認定し、 病状の監視義務違反と転院義務違反を認めた事例 ●H14.12.12仙台地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:新生児(女児) 医療機関:個人産婦人科診療所(福島県原町市内) ■28 カレーライスに混入された砒素による中毒で男児が死亡したことについて、 急変するまでの間、通常の食中毒として治療がなされたことには過失がないとした事例 ●H14.12.12和歌山地裁判決 請求棄却 ※ ●当事者 患 者:10歳男性 医療機関:私立病院 ■29 硬膜外ブロック注射後に診療台から転倒し、頭部を強打して死亡したことに ついて、転倒防止義務等を認めた上で死亡との因果関係を否定し、期待権侵害 のみを認定した事例 ●H14.12.17岡山地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:70歳代男性 医療機関:吉永町国民健康保険町立病院 ■30 再発直腸癌の術中に生じた尿道損傷と仙骨静脈叢の損傷を過失と認定したが、 患者の死亡との因果関係を否定した事例 ●H14.12.19宇都宮地裁判決 請求棄却 ※ ●当事者 患 者:70歳代男性 医療機関:病院(栃木県下都賀郡内) ■31 せつ腫症及び痒疹に対し、外用剤を試みることなくステロイド(デキサメサゾン) が7投7休法で処方された結果、患者がステロイド離脱症候群に罹患したことに ついて、医療機関が副作用や服用上の注意を説明する義務を怠ったとされた事例 ●H14.12.24札幌地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:40歳代女性 医療機関:診療所(札幌市東区内) ■32 双胎第二子が人工破膜直後に臍帯脱出を来たして高位鉗子分娩で娩出された後、 脳性麻痺が残ったことについて、医療機関の責任を認めなかった事例 ●H14.12.25東京地裁判決 請求棄却 ※ ●当事者 患 者:新生児(双胎第二子) 医療機関:病院(総合周産期母子医療センター指定) ■33 一般胃内視鏡検査時にセルシンによる意識下鎮静を含む前投薬を原因とする アナフィラキシーショックで死亡したことについて、キシロカイン、ブスコパン 及びセルシン投与に関する問診義務違反を認めた事例 ●H15.1.9福岡地裁小倉支部 一部認容 ※ ●当事者 患 者:20歳代女性 医療機関:社会福祉法人立病院(北九州市内) ■34 顎関節症治療のためのマウスピース作成時に即時重合レジンを用いた際、 口腔内に火傷が生じたことについて、医療機関の責任が認められた事例 ●H15.1.14岡山地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:40歳代女性(歯科衛生士) 医療機関:大学歯学部附属病院(岡山市内) ■35 糖尿病性足壊疽の患者が約1カ月の外来通院の後に足関節からの切断を 余儀なくされたことについて、X線撮影、インスリン投与、 患部の安静・免荷指示等に不備があったとされた事例 ●H15.1.29広島高裁松江支部判決 原判決変更・一部認容 ※ ●当事者 患 者:60歳代男性 医療機関:外科無床診療所 ■36 分娩監視装置を使用しないまま陣痛促進剤を多量に投与した結果、 過強陣痛によって児に重篤な障害が残存したことについて、 添付文書記載の注意事項に従わなかった過失を認めた事例 ●H15.2.7前橋地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:新生児(男児) 医療機関:医療法人一灯会新生産婦人科医院(伊勢崎市) 病院と担当医に対し、連帯して約1億2800万円の賠償を命令。 ■37 拘置所に収監されたベーチェット病の患者が左眼失明等に至ったこと について、法務技官であった医師が眼科専門医を受診させることを 怠った過失を認めた事例 ●H15.2.13東京地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:30歳代男性 医療機関:福岡拘置所 ■38 プレス機で負傷した指の観血的整復固定術を行った後、結局切断を余儀 なくされたことについて、切断に至る可能性があることの説明義務違反を 認めた事例 ●H15.2.14前橋地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:20歳代男性 医療機関:潁原病院(太田市内) ■39 卵巣腫瘍等に対して化学療法を実施するにあたって、担当医が患者に無断で クリニカルトライアルの対象症例として登録し、実施する化学療法の内容を プロトコールに基づき無作為割付で決定したことについて、患者の自己決定権 を侵害したとして慰謝料の支払いを命じた事例 ●H15.2.17金沢地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:50歳代女性 医療機関:金沢大学医学部附属病院 ■40 脳動脈瘤の確定診断のために実施された脳血管造影検査中に脳梗塞を発症した ことについて、検査の適応や手技に問題がなかったとされた事例 ●H15.2.26仙台地裁判決 控訴棄却 ※ ●当事者 患 者:70歳代 医療機関:仙台市立病院 ■41 31週で前期破水に至ったため帝王切開で分娩された児が死亡したことに ついて、医療機関に破水の見落とし等の過失はないとした事例 ●H15.2.28東京地裁判決 請求棄却 ※ ●当事者 患 者:新生児(女児) 医療機関:市立総合病院 ■42 常位胎盤早期剥離によって児に脳性麻痺が残存し、その後に死亡したこと について、経時的な分娩監視を怠った過失を認定した事例 ●H15.3.7鹿児島地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:新生児(女児) 医療機関:産婦人科診療所(鹿児島市内) ■43 異型を伴う乳頭部腺腫の治療について、病状を詳細に説明せず、ことさらに 癌化の不安をあおって単純乳房切除術を実施した主治医の説明義務違反が 認められた事例 ●H15.3.14東京地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:40歳代女性 医療機関:国立がんセンター中央病院 「患者のための医療」へ戻る |
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