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統計学の足立堅一先生の
『どこにも書いてない、誰も教えてくれない「統計解析」
−本当に重要な“勘どころ”とは−』


統計学の足立堅一先生の
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第4回『乳癌の臨床』賞決定
優秀賞:柏葉匡寛・他
「原発乳癌におけるHER2/neu 細胞外ドメイン測定の有用性
―新規測定系ケミルミCentaur-HER2/neu での日本人での検証―」

論文抄録

 新規のHER2可溶性抗原測定系ケミルミCentaur-HER2/neu を用いて原発乳癌40例におけるHER2-ECD を測定し,臨床病理学的因子との相関を検証した.HER2-ECD はFISHでのHER2過剰発現,臨床病期,リンパ節転移と有意な相関がみられた(p<0.05).一方,FISH によるHER2過剰発現陰性例でもHER2-ECD が高値を示す症例がみられた.HER2の遺伝子増幅が無い,あるいは蛋白発現が低い腫瘍でも腫瘍径が大きい場合HER2-ECDが高値となる可能性が考えられたが,腫瘍因子T と免疫染色での発現強度0 − 3 +の積(HER2 burden index)とHER2-ECD が有意な相関を示した事で説明された.今後HER2-ECD がTrastuzumab の感受性予測因子,予後因子として有用性が検討される上で,今回の原発乳癌での検証は重要であったと考える.(本誌第24巻第1 号掲載)
奨励賞:西村理恵子・他
「乳癌穿刺吸引細胞診標本を用いた液状細胞診法による
ホルモンレセプターの判定」

論文抄録

 乳癌のホルモンレセプターの判定には,ホルマリン固定パラフィン包埋切片が用いられる.しかし,細胞診検体しか得られない場合もある.
 そこで,22例の乳癌穿刺吸引細胞診検体のホルモンレセプター結果を,手術検体腫瘍部のホルマリン固定パラフィン包埋切片の結果と比較した.細胞診標本作製には,液状細胞診システム( ThinPrep System:オリンパス)を用いた.ホルモンレセプターの免疫染色には,自動免疫染色装置(ベンタナXT システム ベンチマーク:ロッシュ・ダイアグノスティックス)を用いた.ホルマリン固定標本を染色する場合と同じプロトコールで染色した.
 エストロゲンレセプターは,22例中21例で細胞診と組織の結果が一致し(精度96%),プロゲステロンレセプターは,22例中20例で細胞診と組織の結果が一致した(精度91%).エストロゲンレセプターあるいはプロゲステロンレセプターのいずれかが陽性の例をホルモンレセプター陽性とすると,全症例で細胞診と組織の結果が一致した.
 乳癌ホルモンレセプターの細胞診を用いた判定は実用可能である.また,安定した細胞診標本作製に,液状細胞診が有用である.(本誌第24巻第5 号掲載)
選考過程
 「乳癌の臨床」誌の第24巻1 号から6 号までに掲載された投稿論文を対象とする「乳癌の臨床」賞の選考委員会が,2010年2 月25日(木),八重洲富士屋ホテル(東京・中央区)にて開催された.

 選考対象論文は前回より原則原著論文のみとし,症例をはじめ他の項目の論文については,特筆すべきものに限って審査対象に加えることとしている.

 選考委員会開催に先立ち,各委員は原著23論文について+ 2 〜− 2 点に点数化した5 段階で評価を行った.また,症例等については選考の対象と思われる論文についてのみ評価した.その結果,選考対象論文は原著23論文のみとなった.各委員の採点結果は編集部にて集計し,論文毎に平均値を出した.

 選考委員会当日は,事前の5 段階評価で平均値の高かった原著5 論文について,個別に評価・選考が行われた.選考委員による意見交換が行われたが,最優秀賞については該当はないとの意見でまとまった.優秀賞については,委員すべての採点が高く評価にばらつきがないこと,オリジナリティがあるということから「原発乳癌におけるHER2/neu 細胞外ドメイン測定の有用性―新規測定系ケミルミ Centaur-HER2/neu での日本人での検証―」(岩手医科大学外科学講座/柏葉匡寛先生・他)に決定した.奨励賞については,「乳癌穿刺吸引細胞診標本を用いた液状細胞診法によるホルモンレセプターの判定」(四国がんセンター臨床検査科/西村理恵子先生・他)が,今後さらなる研究が期待されることから奨励賞に相応しいとの意見があり,決定した.

 受賞発表として,小社ホームページおよび日本乳癌学会発行の季刊誌「NEWS LETTER」にも受賞者名と論文タイトルを掲載する.賞状と副賞は,小社より受賞者に直接持参した.

受賞の言葉
岩手医科大学外科学講座
柏葉匡寛

外来化学療法室の仲間,佐藤誠志薬剤師,
熊谷真澄認定看護師と共に
 この度は栄誉ある「乳癌の臨床」賞優秀賞を賜り誠に有り難うございます.本論文の主旨でありますHER2可溶性抗原(HER2-ECD)測定の意義に関してはSABCS 2006やASCO 2008でHER2陽性再発乳癌での予後因子,あるいはTrastuzumab やLapatinib 治療における効果予測因子として興味深い発表が相次ぎました.しかしCut-off 値の設定が欧米健常者の血清を用いているため,日本人の原発乳癌患者での動向の確認が重要になると考え本研究に着手しました.確かに海外のインパクトある発表はわれわれ日本の研究者の興味をそそりますが,実臨床への応用を前にした冷静なCriticism とUniversality の検証が重要であることを再認識させられました.また,従来の腫瘍マーカーと同じではという意見もありましたが,治療標的蛋白そのものを観察している故に今後の抗HER2治療によるシグナル伝達のsurrogate marker としての発展性が感じられる点が研究者にとっては魅力的です.今回の受賞を糧に今後もAcademia で働く乳腺外科医として,患者さんへの誠実さと科学者としての情熱の均衡を信条に研鑽を積みたいと考えております.最後に研究にご協力いただいた稲葉亨,早川善郎両先生,ご指導いただいた外科学教室の若林剛教授,採血にご協力いただいた昼澤,熊谷,三浦認定看護師,サンプル回収から検査までご尽力いただいたシーメンスメディカルソリューションズ社の上野幸三先生,浅野寛道様にこの場を借りて厚く御礼申し上げます.

四国がんセンター 臨床検査科
西村理恵子

愛用の顕微鏡と共に
 この度は「乳癌の臨床」賞奨励賞を賜り,ありがとうございました.「乳癌の臨床」誌は日常愛読し,時々論文を掲載していただいておりましたので,大変光栄です.これを励みに,今後も貴誌に論文を投稿させていただきたいと思います.
 さて,受賞いたしました論文「乳癌穿刺吸引細胞診標本を用いた液状細胞診法によるホルモンレセプターの判定」は,厚生労働省平成21年度がん助成金による研究「本邦での乳癌検体におけるホルモン受容体,HER2受容体発現評価の精度管理システム構築に関する研究」(班長 青儀健二郎,四国がんセンター乳腺科)の一環として行った研究をまとめたものです.臨床的には,乳癌細胞診検体(とくに転移巣や状態の悪い患者)を用いた受容体検査の要望は強いにもかかわらず,安定した結果が出せる方法は一般化しておらず,保険適応にもなっていません.本論文は,乳癌の液状細胞診検体を用いたホルモン受容体検査は,組織標本を用いた検査との一致率がたいへん高く,かつ安定した結果が出せることを報告しました.本論文が,乳癌細胞診検体ホルモン受容体検査一般化へのきっかけになるとよいと思います.
 最後になりましたが,私の研究を後押しし全面的に協力して下さいました青儀健二郎先生をはじめ当院乳腺科の先生方,免疫染色方法の検討と検体の標本作製に協力して下さいました山本珠美さんをはじめ当院臨床検査科病理担当技師の方々に感謝いたします.


*本誌では今年も第五回「乳癌の臨床」賞を選考致します.日頃の研究成果を是非本誌へご発表ください.
「乳癌の臨床」編集部


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