「乳房温存手術における oncoplastic surgery ―広範乳腺脂肪弁による乳房形成術―」
論文抄録
日本人の乳房は高濃度乳腺が多く,乳腺・脂肪織を大きく移動しても血流が保たれやすい.比較的乳房の小さい高濃度乳腺の上部領域乳癌に対し乳房温存術時に広範乳腺脂肪弁による乳房形成を行っているので紹介する.術前,立位で乳頭の高さ,鎖骨下の乳房上縁をマークする.乳房部分切除を施行後,術前のマークまで大胸筋前面の剥離を行い,ついで皮下を剥離し,大胸筋の剥離創とつなげる.外側腫瘍では内胸動静脈の貫通枝,内側腫瘍では外側胸動静脈の枝を必ず温存する.乳房形成を行う際,頭側・外側から乳房を圧迫し,乳頭が座位でマークした位置にくるように配慮する.この方法は高濃度乳腺の多い日本人に適したoncoplastic surgery である.(本誌第26巻第3 号掲載)
この度は“乳癌の臨床”賞優秀賞を賜り,誠にありがとうございました.このような名誉ある賞をいただけたこと,大変光栄に思っております.
欧州ではoncoplastic surgery のさまざまな手技が報告されていますが,文化や体型の違う日本人に施行する場合は多少の工夫が必要だと感じ,うまくいかなかったら次の患者さんでは改良する,という繰り返しで少しずつ小さなノウハウを蓄積してきました.“実際に実践して学んだちょっとした工夫”を知ってもらいたいと思い,最近,論文にしています.今回,優秀賞に選考していただいた「乳房温存手術におけるoncoplastic surgery ―広範乳腺脂肪弁による乳房形成術―」も,乳房温存手術で乳腺外科医の行えるちょっとした工夫を報告したものの1 つです.その論文を優秀賞に選んでいただいたということは,こういう内容が乳腺外科医に役にたつと認めていただけたものと感じ,大変喜んでおります.今回の受賞を励みに,これからもちょっとした工夫をどんどん発表していこうと思っています.優秀賞,本当にありがとうございました.