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統計学の足立堅一先生の
『どこにも書いてない、誰も教えてくれない「統計解析」
−本当に重要な“勘どころ”とは−』


統計学の足立堅一先生の
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第7回『乳癌の臨床』賞決定
最優秀賞:該当なし

優 秀 賞:3編

波戸ゆかり,他
「ホルモン受容体陽性乳癌の再発時期に関する検討」
(第27巻第2号掲載)
唐 小燕,他
「 乳癌におけるKi-67陽性率の評価方法:画像解析装置による
Ki-67 labeling index と病理医目視によるKi-67スコアの比較検討」
(第27巻第3号掲載)
諏訪 香,他
「当科の手術症例におけるHER2陰性Luminal type 乳癌の治療成績」
(第27巻第6号掲載)

選考過程
  「乳癌の臨床」誌の第27巻第1 号から第6 号までに掲載された投稿論文62本を対象とする第七回「乳癌の臨床」賞の選考委員会が,「乳癌の臨床」誌編集委員によって2013年2 月5 (火)に開催された.
 各委員は掲載論文について事前に原著論文はすべて,その他の論文については特筆すべきものに限り+ 2 点から− 2 点に点数化した5 段階で評価を行っており,第七回「乳癌の臨床」賞選考委員会当日の審査対象論文は33本(原著21本,症例14本,調査報告2 本,診断治療の工夫3 本)となった.
 各委員の採点結果は編集部にて集計し,論文毎に平均値を出した.なお,公平性を保つため,@委員が共著者に含まれる論文,A委員の所属が筆頭著者と同施設の論文については,その委員は採点を行わないこととした.
 まずは最優秀賞の選考が行われたが,対象論文に記憶に残るようなインパクトのある論文がなく,また事前の5 段階評価で委員全員から高い評価を得た論文もなかったことから,最優秀賞は該当なしとの意見で一致した.
 つぎに,優秀賞の選考が行われた. 5 段階評価で平均値の高かった原著論文3 編「ホルモン受容体陽性乳癌の再発時期に関する検討」(波戸ゆかり,他),「乳癌におけるKi-67陽性率の評価方法:画像解析装置によるKi-67 labeling index と病理医目視によるKi-67スコアの比較検討」(唐 小燕,他),「当科の手術症例におけるHER2陰性Luminal type 乳癌の治療成績」(諏訪 香,他)に絞り検討されたが,甲乙つけがたく, 3 編すべてが優秀賞に選ばれた.
 受賞発表として,小社ホームページおよび日本乳癌学会発行の季刊誌「NEWS LETTER」にも受賞者名と論文タイトルを掲載する.賞状と副賞は,小社より受賞者に直接持参した.
 なお,今回の選考委員会では,過去にも議論となった「症例論文を原著論文と同じように評価することは困難である.症例論文を選考対象としてよいのか」という意見が改めて出された.検討の結果,事前の5 段階評価で症例論文が高評価を得た事例がないことも踏まえ,次回より症例論文は選考の対象から除外することとなった.なお,調査報告や診断治療の工夫については,従来通り選考の対象とする.

「ホルモン受容体陽性乳癌の再発時期に関する検討」
波戸ゆかり*1,2,他

論文抄録

 目的:ホルモン受容体陽性原発性乳癌に対する術後ホルモン療法は5 年間が標準治療である.しかしホルモン療法終了後も再発する症例を多く経験する.ホルモン受容体陽性乳癌(以下,HR 陽性乳癌)の再発時期について,ホルモン受容体陰性乳癌(以下,HR 陰性乳癌)と比較し検討した.
 対象:1998年〜2003年に,当院で手術を施行した原発性乳癌1,771例のうち,再発した乳癌は311例(17.6%)で,そのうちHR 陽性乳癌は199例(11.2%),HR 陰性乳癌は112例(6.3%)であった.HR 陽性/HR 陰性に分類し,各々の再発時期(とくに5 年目以降)について検討した(観察期間中央値 73カ月).
 結果:HR 陽性乳癌は199例中47例(23.6%)が,術後5 年目以降に再発した.また,HR 陰性乳癌は112例中8 例(7.1%)が,術後5 年目以降に再発した.また,HR 陽性乳癌のうち,リンパ節転移陽性症例は131例中25例(19.1%)が,リンパ節転移陰性症例は68例中22例(32.4%)が術後5 年目以降に再発した.HR 陰性乳癌のうち,リンパ節転移陽性症例は78例中5 例(6.4%)が,リンパ節転移陰性症例は34例中3 例(8.8%)が,術後5 年目以降に再発した.このようにリンパ節転移の有無に分類しても,HR 陽性乳癌の方が,術後5 年目以降の再発症例数が多い.とくにリンパ節転移陰性症例に術後5 年目以降の再発例を多く認めた.
 まとめ:ホルモン受容体の有無によって,再発時期が異なることが確認された.HR 陽性乳癌においては,リンパ節転移陽性例のみならず他の再発リスクを考慮した上で陰性例も,今後ホルモン療法施行期間延長の検討が必要ではないかと考えられた.
*1愛知県がんセンター中央病院 乳腺科
*2トヨタ記念病院 乳腺内分泌外科
受賞の言葉
現 名古屋市立大学乳腺内分泌外科

波戸ゆかり 先生

 このたびは「乳癌の臨床」賞を賜り,誠にありがとございます.このような名誉ある賞をいただき,大変光栄に思います.今回の受賞を励みとし,これまで以上に精進して参ります.ありがとうございました.

乳癌におけるKi-67陽性率の評価方法:画像解析装置によるKi-67 labeling index と
病理医目視によるKi-67スコアの比較検討
唐 小燕*1,2,他

論文抄録

 われわれは,抗Ki-67抗体を用いて100例のホルマリン固定パラフィン包埋乳癌切片を免疫染色し,Ventana Image Analysis System にてKi-67 labeling index( Ki-67 VIAS LI )の平均値を各症例ごとに算出し,これを病理医による陽性Ki-67スコアと比較することによりKi-67陽性率の評価方法を検討した.Ki-67 VIAS-LI とKi-67スコアによる結果の解離が10%以内の場合を“結果一致”としたとき,それらの一致率は65/100(65%)であった.また,Ki-67 VIAS-LI とKi-67スコアの間には強い相関関係がみられた(回帰直線:y=0.7756x−2.5504,相関係数:R2=0.8269).Ki-67 VIAS-LI が30%以下の場合Ki-67スコアとの差が一番小さく,Ki-67スコアによる判定も信頼性が高いと考えられた.St. Gallen 2009コンセンサスの乳癌増殖能を評価するKi-67陽性率の3 カテゴリー(低増殖能:£15%,中増殖能:16-30%,高増殖能:>30%)に100症例を分類したところ,各カテゴリーの割合は,Ki-67 VIAS-LI に基づくとそれぞれ38%,27%,35%であったが,Ki-67スコアに基づくと,それぞれ58%,23%,19%となり,Ki-67スコアでの判定が低くなる傾向がみられた.Ki-67 VIAS-LI の方がKi-67スコアより高い陽性率を示す要因として,選択する視野がhot spot に傾がることが考えられた.
*1日本大学医学部 病態病理学系病理学分野
*2東海大学医学部 病理診断学部
受賞の言葉
日本大学医学部 病態病理学系病理学分野

唐 小燕 先生

 このたびは,「乳癌の臨床」賞優秀賞をいただきまして,誠にありがとうございます.このような受賞の機会をいただきましたことは,多数の関係者および選考委員のご支持の賜物であると存じます.この場を借りて厚く御礼を申し上げます.
 Ki-67陽性率は乳癌予後因子の1 つとされ,乳癌の再発に関連し,治療法選択の指標としても用いられています.しかし,Ki-67陽性/ 陰性のカットオフ値が統一されていない現状の中で,免疫染色結果より得られるKi-67陽性率が乳癌日常診療の必要項目とされ,多くの病理医はその評価方法に悩まされています.今回受賞した,「乳癌におけるKi-67陽性率の評価方法:画像解析装置によるKi-67 labeling index と病理医目視によるKi-67スコアの比較検討」は,Ki-67陽性率の評価をより客観性と再現性のあるものにする試みであります.この論文を優秀賞として選んでいただいたことは,乳癌に関わる先生たちが,Ki-67陽性率の評価に高い関心を持っている表れでもあります.乳癌の診断にたくさんの課題が残されています.このたびの受賞を受けましたことを胸に,これからも,臨床および病理の両方に役に立つ仕事に励みたいと存じます.
 本当にありがとうございました.

当科の手術症例におけるHER2陰性Luminal type 乳癌の治療成績
諏訪 香*1,他

論文抄録

 当科の浸潤性乳管癌手術症例1,614例をSt.Gallen2011のIHC 法による代替定義によりintrinsic subutypeに分類し,全身治療の選択に際し,従来の解剖学的な再発リスクよりもsubtype による生物学的な治療効果を重視していくことの妥当性を,とくにHER2陰性のLumimal type 乳癌において検討した.
 HER2陰性のLuminal type 乳癌であるLuminal A(以下L-A)症例とLuminal B(以下L-B)症例では治療成績に大きな差があり,L-A 症例の治療成績は従来の臨床病理学的予後予測因子にかかわらず非常に良好であった.L-B 症例では全体の治療成績が不良なだけでなく,臨床病理学的予後予測因子からみた治療成績の差も非常に大きかった.L-B 症例では治療成績の改善の余地が大きく,内分泌療法に加えてこれらの因子を考慮した,さらに明確な化学療法の適応基準や内容が示されるべきと思われた.
*1聖隷浜松病院 乳腺科
受賞の言葉
聖隷浜松病院乳腺科

諏訪 香 先生

 栄誉ある賞に選ばれ,信じられない気持ちで一杯です.本当にありがとうございます.  St.Gallen のコンセンサス会議が開催されるたびに乳癌の薬物療法選択の指針が変遷し,臨床医として患者さん一人ひとりにどのようにしていくべきなのか,診療のなかで毎日模索しています.この論文は当科の臨床成績からそれを検証しようとしたもので,とくにHER2陰性のluminal 症例のうちKi67値のみで分けられるluminal AとB において従来の解剖学的予後予測因子の持つ意義を検討したところ,luminal A 症例ではこれらの因子にかかわらず非常に良い治療成績が得られており,luminal B 症例ではこれらの因子による治療成績の差がとても大きいことが再認識されました.  今回の賞は私たちが日々真剣に取り組んでいる臨床を評価していただいたものであり,当科の診療を支えて下さっている病理診断科・化学療法科・外科の諸先生方や研修の先生方に,心より感謝しております.また,当院の乳腺科を築きあげ,このようにいつも自分たちの臨床をまとめ評価していくことを教えて下さった前任の神崎正夫先生,そして当院病理診断科の実臨床に沿った詳細な診断を築いてこられた小林 寛先生のお二人へも,心からの感謝をお伝えしたいと思います.


*本誌では今年も第八回「乳癌の臨床」賞を選考いたします.日頃の研究成果を是非本誌へご発表ください.

「乳癌の臨床」編集部


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