【まえがき】   私がアウトカム基盤型教育を理解するに至ったきっかけは,2004年9月に  スコットランドのエジンバラで開催されたヨーロッパ医学教育学会  (Association for Medical Education in Europe, AMEE)への参加です.  初日のセッション1のPlenary 1 The curriculum and learning outcomesの  最初の演者として登壇したRonald M Harden先生が「We know a good archer  by his aim, not by his arrows」と言うタイトルで行った30分の講演を聞い  たことです.動物の漫画を多用した分かりやすい内容で初めてアウトカム基  盤型教育の何たるかを理解することができました.翌年に本文でも紹介され  ていますが,千葉大学医学部が医学教育の外部評価を受けた際に,学習アウ  トカムの明示とそれを達成するための教育改革を主な内容とする提言をイリ  ノイ大学シカゴ校のMark Gerula先生からいただきました.その後の経緯は本  文に詳述されていますので省きますが,多くの先生方のご助言とご指導によ  り現在のアウトカム基盤型教育を作り上げることができました.   アウトカム基盤型教育について我が国で最初に言及されたのは,本書の冒  頭で歴史,概念,理論について解説していただいた東京大学の大西弘高先生  だと思います.2011年に広島で開催された第43回日本医学教育学会で「今,  なぜアウトカム基盤型教育?」というテーマでシンポジウムを企画させてい  ただきました.大西先生と鹿児島大学の田川まさみ先生に協力をお願いし,  私も含めて3名のシンポジストで進行させていただきました.本書の企画は  そのシンポジウムがベースになっています.   本書を通してアウトカム基盤型教育に関する理解が深まり,普及すること  で,我が国の医学教育がさらに進化し,改善することを期待します.本書を  今後さらに良いものにしていくために,お読みいただいた皆様からのご意見,  ご要望をお聞かせいただければ幸いです.   篠原出版新社の井澤 泰さんには長らく編集にお骨折りいただき心から感  謝申し上げます.                               2013年7月                           編著者 田邊 政裕                   【目 次】  T アウトカム基盤型教育について   第1章 アウトカム基盤型教育の歴史、概念、理論・・・・・・・・・・大西 弘高 3    はじめに  3    1.カリキュラムとは  3    2.大学とは  9    3.日本の大学の変遷  13    4.世界におけるOBEの流れ  19    まとめ  32     第2章 コンピテンス、コンピテンシーの歴史、概念、理論・・・田川まさみ 39    はじめに  39    1.歴史  39     1.1 1970年代  39     1.2 1980年代  41     1.3 1990年代  41     1.4 2000年から現在  44     1.5 日本での動向  46    2.概念と理論  46     2.1 コンピテンシー基盤型教育に関連する単語の定義  46     2.2 コンピテンシー基盤型教育の特性と基本  52     2.3 コンピテンシー基盤型カリキュラムの開発  55     2.4 コンピテンシー基盤型教育とアウトカム基盤型教育の共通点と       相違点 56     2.5 コンピンテンスからエクセレンスへ  57  U アウトカム基盤型教育の導入と実践   第1章 アウトカム基盤型教育におけるカリキュラムの構築と改善       −千葉大学医学の取り組みから−・・・・・・・・・・・・・・・・・・田邊 政裕 61    1. アウトカム基盤型教育導入の背景  61     1.1 世界的な動向  61     1.2 わが国の動向  62     1.3 千葉大学医学部の取組み  62    2. アウトカム基盤型教育の導入  65     2.1 Step 1(コンピテンシーの決定)  65     2.2 Step 2(コンピテンシーの構成要素と           パーフォーマンス・レベルの設定)71     2.3 Step 3(構成要素、パーフォーマンス・レベルに応じた教育・学習方法、           評価法の作成)  77     2.4 Step 4(全教育課程の評価、全コンピテンシーの見直し、           カリキュラムの改善) 84    おわりに  86   第2章 評価法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・伊藤 彰一 89    はじめに  89    1.評価の原則  90     1.1 妥当性・信頼性・実行可能性  90     1.2 総括的評価  90     1.3 形成的評価  91    2.評価の計画  92     Why?(評価目的)     What?(評価項目)     Who?(評価者)     When?(評価時期)     Whom?(評価対象)     Where?(評価場所)     How?(評価方法)    3.学習進展レベルと評価  94    4.コンピテンシーと評価  95    5.診療現場での評価(WBA)  95    6.ポートフォリオ  98     6.1 ポートフォリオの特長  98     6.2 ポートフォリオ評価  100     6.3 eポートフォリオ  101    7.OSCE, CPX  103   第3章 鹿児島大学での実践・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・田川まさみ 111    1. カリキュラムリフォームの経緯  111    2. ニーズアセスメントとミッション、教育到達目標の設定  113     2.1 教育のミッション  114     2.2 教育到達目標  115    3. 教育理念  116    4. 3段階の到達目標修得と科目の構築  117     4.1 教育到達目標修得と科目の構築  117     4.2 科目の構築  120     4.3 モデル・コア・カリキュラムと科目  122    5. 学生のアウトカム評価方法の改善  122     5.1 卒業時の評価  123     5.2 eポートフォリオによる評価と形成的指導  124    6. カリキュラム運営組織構築と諸制度の整備  125     第4章 IPEとアウトカム基盤型教育・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・朝比奈真由美 128    はじめに  128    1. IPEとは  128     1.1 チーム医療教育としてのIPE  128     1.2 IPEの定義・目的  130    2. 千葉大学のIPEとOBE  131     2.1 亥鼻IPEとOBE  131     2.2 亥鼻IPEのアウトカム評価  134    3. アウトカム基盤型教育の改善とIR――亥鼻IPEの事例を中心に      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・前田   崇 134     3.1 教育改善とIR  134     3.2 海外の実践例  135     3.3 千葉大学の実践例  138     3.4 おわりに  141   索引  145