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統計学の足立堅一先生の
『どこにも書いてない、誰も教えてくれない「統計解析」
−本当に重要な“勘どころ”とは−』


統計学の足立堅一先生の
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第一回『乳癌の臨床』賞決定
最優秀賞:金丸 仁・他
「月経周期上の手術時期と乳癌の予後との関連
            -静岡県乳癌研究会による再検討-」

論文抄録
 われわれは,1995年に後ろ向き調査で,月経周期における手術時期と乳癌の予後に関連があることを示唆する報告をしたが,再度この問題について前向き研究を行った.
 静岡県内24施設の共同で318例を解析対象とした.月経開始日から手術までの日数により2群に分類し,無再発生存率(DFS)と,全生存率(OS)を比較した.2群に分類する方法として3種類の方法を採用し,それぞれについて検討した.
 リンパ節転移陽性群で,あるひとつの分類法のみ,偶然によると思われる有意差が出たが,ほかのいずれの分類法によっても,DFS,OSに有意差は見られなかった.したがって月経周期における手術時期は,乳癌の予後に影響しないと結論された(本誌第21巻2号掲載).
優 秀 賞:森口喜生・他
「乳房温存療法1,800例の長期成績
           -温存乳房内再発の検討-」

論文抄録
 1987年11月から2005年1月までの自験乳房温存療法施行症例1800例を対象として,その長期治療成績につき検討した.観察期間中央値は63ヵ月で5年生存率・健存率,10年生存率・健存率はおのおの96.0%・88.4%及び91.8%・82.5%であった.温存乳房内再発症例は39例(2.2%)であった.温存乳房内再発の危険因子は年齢40歳以下,ER陰性,断端陽性であったが,断端陽性例でも再発は550例中20例(3.6%)にすぎない.温存乳房内再発39例の再発後5年生存率は73.9%であった.的確な術後照射の併用により,乳房温存療法後の温存乳房内再発は低率に制御され,良好な長期予後が得られた(本誌第21巻2号掲載).
優 秀 賞:草間 律・他
「乳腺MRIにおける粘液癌の組織型推定
            -組織像を対比した検討から-」

論文抄録
粘液癌(19例)の乳腺MRI所見について,その撮像面と病理切出し面を一致させて検討した.粘液量30%以下(少量粘液型)が8例,60%以上(多量粘液型)が11例であった.粘液量は,脂肪抑制T2強調像での信号強度とダイナミックMRIでの造影効果に関係が認められた.粘液量が多い粘液癌では,脂肪抑制T2強調像で高い信号強度(「著明な高信号」)を示し,さらにダイナミックMRIの造影効果は低下して漸増型のダイナミックカーブを示した.一方,少量粘液型では,脂肪抑制T2強調像で信号強度がやや低下し(「高信号」)で,ダイナミックカーブでは120秒以内に急峻な立ち上がりが認められた.ダイナミック後脂肪抑制T1強調像では,「境界明瞭型」(5例)と「境界不明瞭型」(14例)のどちらかを示した.組織学的に前者は圧排性,後者は粘液の間質への浸潤性の傾向が認められた.粘液癌の亜分類である純型(15例)と混合型(4例)の鑑別には,脂肪抑制T2強調像における病変の内部の信号パターンが均一な場合(8例)には純型が全例であったが,不均一な場合(11例)には,純型(7例),混合型(4例)が存在していた.ダイナミックカーブ,ダイナミック後脂肪抑制併用T1強調像の所見と純型,混合型との関連はみられなかった(本誌第21巻6号掲載).

選考過程
 「乳癌の臨床」誌の第21巻1号から6号までに掲載された投稿論文を対象とする「乳癌の臨床」賞の選考委員会が,2007年2月2日(金)14:00?15:00,東京・中央区・ルビーホールにて,編集委員全員参加のもと,開催された.

 選考委員会開催に先立ち,対象期間の全投稿論文について,各委員によってA,B,Cの3段階の評価を行っていただいた.その結果を編集部にて集計し,表を作成した.

 選考委員会当日の議論を紹介する.

 委員の一人から,「原著論文と症例論文では力の入れ方が異なる.原著論文部門と,症例論文部門を分けてはどうか?」との意見があった.この意見に対しては,「今年は,カテゴリーを分けた採点をしていないので,もしカテゴリー別の選考を行うとしたら,来年度からにすべきである」との意見があった.さらに,別の委員からは「診断と治療とを分けた方が良いのではないか」という意見もあったが,これも今年はあらかじめ告知していなかったこともあり,不可能である,という意見が大勢を占めた.

 根本的な議論としては,「良い症例,数多い症例に恵まれた施設は限られている.受賞者もおのずから限定されかねない」との意見があった.さらに,「執筆者が一人や二人というのはありえない.また病理の担当医が執筆者に含まれていない論文は論外だ」との意見もあった.また,最優秀賞を1編に絞ることの難しさが指摘された.これらの意見に対しては,「編集委員のバランスがとれているので,選考に偏りは少ない」という意見が大勢を占めた.

 評価方法については,AからCの3段階評価は,差別化が難しいため,来年度は,5段階評価にしてはどうかという意見が多かった.
 投稿以外の,総論や依頼原稿についても対象にしては,という提案があったが,来年度も投稿原稿のみを対象とすることに落ち着いた.
 賞の目的から若手を優先しては,という意見があったが,「年齢を記載してもらう」ということも現実的でなく,基本的には,オリジナリティがある論文を選考し,奨励賞的な意味合いを考慮すればよい,という意見が多くを占めた.

 以後,全対象論文42論文のうち,事前の3段階評価(AからC)で評価が高かった24論文について個別に評価・選考が行われた.その後,特に3段階評価で高い評価を受けた4論文に絞り,各委員から意見をいただき,今回の賞に相応しい論文はどれであるかの活発な議論が行われた.

 その結果,残った4論文について,8名の委員で,1位から4位を決めて投票することとなった.
 その結果,「月経周期上の手術時期と乳癌の予後との関連-静岡県乳癌研究会による再検討」(静岡県乳癌研究会世話人,藤枝市立総合病院 金丸 仁先生)最優秀賞となった.
 優秀賞には,「乳腺MRIにおける粘液癌の組織型推定-組織像を対比した検討から」(信州乳腺MRI病理研究会,草間 律先生)と,「乳房温存療法1,800例の長期成績-温存乳房内再発の検討」(乳腺クリニック児玉外科,森口喜生先生)の2編が選ばれた.

 各論文に対する選考委員の講評は,以下の通りである.

 金丸 仁先生の論文は,オリジナリティの点で,他の論文と比べて,優れているという評価を得た.特に,分析手法が精緻であり,妥当である点が評価された.月経周期上の手術時期と予後には,なんらかの関係があると思われることがあった.今回の論文によりその関係は否定されたが,このように長いスパンでの地道な研究成果の報告は学術文献として価値があるといえるとの評価を受けた.

 草間 律先生の論文は,標本作製技術,画像データの鮮明度,統計学的分析手法それぞれの水準の高さに加え,得られたデータからの卓越した考察が高い評価を得た.

 森口喜生先生の論文は,乳房温存療法1,800例という圧倒的症例数をもとに,さらに長期成績を分析した価値の高い論文である.ただし,筆頭筆者の論文というより,乳腺クリニック児玉外科のデータである点と,オリジナリティの点では,最優秀賞には届かないとの結論となり,優秀賞となった.

 なお,発表は「乳癌の臨床」小社のホームページにも発表する.さらに,日本乳癌学会発行の季刊誌「NEWS LETTER」に受賞者名と論文タイトルを,掲載する.賞状と副賞は,小社社長が受賞者に,直接持参した.

受賞の言葉
藤枝市立総合病院
金丸 仁
 今年は何かいいことがありそうな気がしていましたが,それがこういう形で来るとは夢にも思っていませんでした.「乳癌の臨床」の年間最優秀論文賞に選ばれたという通知をいただいた時は何かの間違いではないかと思いましたが,考えてみると,今回の論文を書くまでに15年を要しており,継続の努力が認められたのかとも考えました.
 この研究のきっかけは,当院外科の抄読会で,1991年のLancetに載った「Timing of surgery during menstrual cycle and survival of premenopausal women with operable breast cancer」という論文を読んだことです.乳癌手術は月経周期の黄体期に行う方が予後が良いという結論が本当なら大変なことだと思いました.当時,静岡県乳癌研究会の世話人の一人でしたので,研究会としてこのテーマを追試してみたいと提案し,会員病院の協力により,1995年に結果を公表しました.しかし,すっきりした結論にならず,調査も後向きであったため,再度前向き研究として行うこととなり,さらに10年,やっと今回の成果となりました.静岡県乳癌研究会が共同して行った研究であり,私個人が表彰されることにはなりませんが,筆頭著者ということで代表して賞を受けさせていただきました.論文の完成で役目を終え,研究会の世話人を退きましたが,今後も静岡県乳癌研究会の発展と日本の乳癌治療に尽力したいと考えています.
北信総合病院外科
草間 律
 この度,「乳癌の臨床」優秀賞を受賞しましたことは,このうえない名誉であると同時に,画像所見の病理学的な裏づけ(病理学的保証)の重要性を評価されたことに特別な感慨を受けております.約7年前,信州大学在籍中に,土屋眞一先生(現 日本医科大学病理部教授)との会話の中で切除標本の病理切出し方向をMRI撮像面と一致させることによって,その画像がどのような病理組織像に対応するのかを解明しようという話が進み,病理医,放射線科医,外科医が集まり信州乳腺MRI・病理研究会を立ち上げました.その中で今回の報告以外にもいくつかの知見を報告致しましたが,昨年(2006年)その集大成として「臨床と病理のための乳腺MRIアトラス-病理と組織像の完全対比」の刊行(医療科学社)に至ることができました.また,天野純教授(信州大学外科学講座第2)にこの活動を支援していただいたことが今回の栄誉につながったと感じており,信州大学乳腺内分泌外科の皆様に感謝の気持ちを捧げたいと思います.
乳腺クリニック児玉外科(現 京都市立病院外科)
森口喜生
 この度は,創刊21年目となる歴史ある「乳癌の臨床」誌より,記念すべき第1回「乳癌の臨床」賞の優秀賞を頂き,誠に有難うございました.大変名誉な賞を頂きまして,うれしく思っております.受賞致しました「乳房温存療法1,800例の長期成績?温存乳房内再発の検討」の執筆に際しましては,乳腺クリニック児玉外科 児玉宏先生はもちろんのこと,京都大学大学院医学研究科腫瘍放射線科 平岡眞寛教授,日本赤十字社和歌山医療センター病理部  山邉博彦先生,乳腺クリニック児玉外科 三瀬圭一先生,菅典道先生には御指導を賜りまして厚く御礼申し上げます.この賞が,今後も乳癌医療に携わる多くの方々の励みとなるとともに,乳癌診療のさらなる進歩,「乳癌の臨床」誌の益々の御発展を期待してやみません.私も,今回の受賞を機に,こころ新たにして今後も乳腺外科医の一翼として日頃の診療,研究に邁進する所存です.この度の受賞誠に有難うございました.


*本誌では今年も第二回「乳癌の臨床」賞を選考致します.日頃の研究成果の奮ってのご投稿をお待ち申し上げております.


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