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統計学の足立堅一先生の
『どこにも書いてない、誰も教えてくれない「統計解析」
−本当に重要な“勘どころ”とは−』


統計学の足立堅一先生の
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第8回『乳癌の臨床』賞決定
最優秀賞:該当なし

優 秀 賞:3編

和田崎 晃一(県立広島病院 放射線治療科),他

「乳房接線照射における腋窩リンパ節の照射線量について」
(第28巻第1号掲載)


渕之上 史(日本大学医学部 病態病理学系 病理学分野),他

「乳癌におけるHER2,ER 免疫染色の外部精度管理システ
ムモデル確立にむけての予備検討報告」
(第28巻第2号掲載)


黒井克昌(がん・感染症センター都立駒込病院 外科),他

「 病理学的完全奏効ypT0/isypN0の臨床的意義
― JBCRG-01,JBCRG-02,JBCRG-03のプール化解析―」
(第28巻第6号掲載)

「乳房接線照射における腋窩リンパ節の照射線量について」
和田崎晃一(県立広島病院 放射線治療科),他

論文抄録

 乳房部分切除後の残存乳房照射において腋窩リンパ節はターゲットに含まれないが解剖学的位置関係によりある程度は照射範囲に含まれる.2011年1 月〜2011年12月に残存乳房に対して50 Gy の接線照射を行った45症例を対象として腋窩リンパ節の照射線量を3 次元治療計画により検討した.腋窩リンパ節領域の平均線量はレベルI: 6 〜44 Gy(平均27 Gy),レベルII: 4 〜40 Gy(平均18 Gy)であった.V45(45 Gy 以上照射される体積の割合)はレベルI: 0 〜69%(平均25%),レベルII: 0 〜50%(平均4 %)であった.残存乳房照射において大半の症例では腋窩リンパ節領域に対して潜在病変の制御に有効な線量は照射されていなかった.
受賞の言葉
県立広島病院 放射線治療科

和田崎晃一 先生

 このたびは「乳癌の臨床」賞優秀賞を賜りありがとうございました.放射線治療医は多くの乳癌患者の診療に関わっていますが,放射線治療医による乳癌に関する研究は多くなく,本誌への投稿も少ないと思われます.そのような中で本論文を選んでいただいたことについて関係者に大変感謝致します.
 本論文の主旨は,乳房部分切除後の乳房照射における腋窩リンパ節領域の照射線量は少なく,潜在的転移の制御に対する有効性はあまり期待できないというものです.当院のデータでは,腋窩リンパ節領域の線量は欧米からの同様の報告に比べてかなり少なく,欧米とわが国での患者の年齢や体型の違いや照射方法の違いが関係していると推測されます.本論文は,センチネルリンパ節陽性例に対して腋窩郭清の省略が治療成績に影響しないというACSOGZ0011の結果をわが国に適応することには問題があるという根拠の1 つになると思われます.このことが今回評価されたのではないかと思っています.ありがとうございました.

乳癌におけるHER2,ER 免疫染色の
外部精度管理システムモデル確立にむけての予備検討報告
渕之上 史(日本大学医学部 病態病理学系 病理学分野),他

論文抄録

 乳癌におけるHER2,ER 免疫組織化学(IHC)法の外部精度管理の必要性について検討した.ホルマリン固定パラフィン包埋乳癌組織アレイ検体の未染色標本を,全国7 施設でHER2,ER IHC 染色した.染色方法の評価,染色判定の評価を7 名の中央判定医で行った.HER2染色方法の評価は適正4 施設,改善の余地あり1 施設,不適正2 施設,染色判定の評価は適正5 施設,改善の余地あり2 施設であった.ER 染色方法の評価は適正5 施設, 改善の余地あり1 施設,不適正1 施設,染色判定の評価は適正4 施設,改善の余地あり1 施設,不適正2 施設であった.HER2偽陰性を3 施設,ER 偽陰性を1 施設で認めた.さらに中央判定医間でもHER2,ER 判定に不一致を認めた.外部精度管理の必要性が示され,また精度管理者側の判定基準確立も必要と考えられた.
受賞の言葉
日本大学医学部 病態病理学系 病理学分野

渕之上 史 先生

 この度は,「乳癌の臨床」賞をいただきまして,誠にありがとうございます.栄誉ある賞をいただき,大変光栄に思います.
 免疫組織化学染色は染色法,使用抗体,判定法による施設間誤差が多いなか,その結果が癌治療の適応に直結するため,偽陽性,偽陰性が問題となります.この問題を解決するために,ASCO/CAP をはじめ,諸外国では免疫組織化学染色に対する外部精度管理システムが確立・運営されています.しかし,日本ではこのような精度管理システムはありません.
 本論文は,平成24年に日本病理学会精度管理委員会が施行した,乳癌免疫組織化学染色(HER2,Estrogen receptor )の外部精度管理システム設置に向けての予備検討を取りまとめたものです. 7 施設と限られた施設での検討でしたが,免疫染色の現状と問題点が明らかになりました.この予備検討の結果をふまえ,平成25年には全国約170施設の日本病理学会認定施設の参加による,本邦初の乳癌免疫組織化学染色の外部精度管理が施行され,結果が待たれるところです.  このような取り組みを取りまとめる機会を与えてくださりました,日本病理学会精度管理委員会の先生方に,この場をお借りして御礼申し上げます.

病理学的完全奏効ypT0/isypN0の臨床的意義
― JBCRG-01,JBCRG-02,JBCRG-03のプール化解析―
黒井克昌(がん・感染症センター都立駒込病院 外科),他

論文抄録

 目的:術前化学療法におけるypT0/isypN0の臨床的意義について検討することを目的としてプール化解析を行った.
 対象と方法:術前化学療法の第II 相試験JBCRG-01,JBCRG-02,JBCRG-03に登録された353例を対象とした.
 結果:Cox 比例ハザードモデルによる解析の結果,無病生存期間に対しては組織学的リンパ節転移,サブタイプ,組織学的治療効果が,全生存期間に対してはこれらの因子に加え腫瘤径が有意な予後因子であった.初再発部位はサブタイプ,あるいはypT0/isypN0の得られた症例と得られなかった症例で異なる傾向を認めた.ロジスティック回帰モデルによる解析の結果,サブタイプ,術前化学療法終了時の臨床的治療効果がypT0/isypN0の予測因子であった.とくに,トリプルネガティブ乳癌はypT0/isypN0率が高いにも関わらず予後は不良であった.
 結論:組織学的完全奏効の定義としてypT0/isypN0は有用で,サブタイプ別の治療戦略が重要であると考えられた.

受賞の言葉
がん・感染症センター都立駒込病院 外科

黒井克昌 先生

 このたびは「乳癌の臨床」賞優秀賞を賜り,誠にありがとうございます.このような名誉ある賞をいただき,大変光栄に思います.この場を借りて厚くお礼を申し上げます.
 乳癌の術前薬物療法は温存率向上や,薬剤感受性の評価のできることなどの利点を有しており,そのエンドポイントとして組織学的治療効果が注目されています.今回受賞した「病理学的完全奏効ypT0/isypN0の意義 ― JBCRG-01,JBCRG-02,JBCRG-03のプール化解析―」は,日本で行われた臨床試験のプール化解析を行い,ypT0/isypN0の有用性とサブタイプ毎の治療戦略の重要性について報告したものです.結果は海外で行われたメタアナリシスと一致しており,日本発のエビデンスの創出の一役を担えたのではないかと自負しています.この論文を優秀賞として選んでいただいたことは,多数の関係者および選考委員のご支持の賜物であると同時に,乳癌の診療や研究に関わる先生方が術前薬物療法に高い関心を持っていることの表れでもあると考えています.今回の受賞を励みとし,これまで以上に精進してまいります.ありがとうございました.


*本誌では今年も第九回「乳癌の臨床」賞を選考いたします.日頃の研究成果を是非本誌へご発表ください.

「乳癌の臨床」編集部


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