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統計学の足立堅一先生の
『どこにも書いてない、誰も教えてくれない「統計解析」
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統計学の足立堅一先生の
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第9回『乳癌の臨床』賞決定
最優秀賞:該当なし

優 秀 賞:2編

蒔田 益次郎(がん研有明病院 乳腺センター 乳腺外科),他

「非浸潤癌温存療法後の2 次乳癌の発生が乳房内再発を高める」
(第29巻第2号掲載)


大橋仁志(東京慈恵会医科大学 乳腺・内分泌外科),他

「乳癌術後10年以降の晩期再発の予後因子の検討」
(第29巻第3号掲載)



「非浸潤癌温存療法後の2 次乳癌の発生が乳房内再発を高める」
蒔田 益次郎(がん研有明病院 乳腺センター 乳腺外科),他

論文抄録

 非浸潤癌は発見頻度が高くなり,また乳房温存療法も多く適用されるようになった.そこで,非浸潤癌の乳房温存療法の成績について乳房切除との比較,浸潤癌との比較を行った.1994年から2003年までの非浸潤癌685例と割面腫瘍径3 cm 以下の浸潤癌3,139例を用いて,再発,対側乳癌発生を検討した.非浸潤癌の乳房切除では局所再発はないが,部分切除では8.1%が局所再発した.温存術後の同側新生乳癌発生(NP)率は非浸潤癌が浸潤癌に比べて有意に高く,対側乳癌発生率も非浸潤癌で有意に高かった.部分切除症例では領域・遠隔再発の再発全体に占める比率は浸潤径に比例して高まるが,NP の比率は非浸潤癌で高かった.非浸潤癌の多発性は治療の上で考慮すべき問題と思われた.
受賞の言葉
がん研有明病院 乳腺センター 乳腺外科

蒔田 益次郎 先生

 このたびは「乳癌の臨床」優秀賞をいただき,大変光栄に存じますとともに,関係した多くの先生方に深甚なる感謝の意を表します.  今回の論文は非浸潤癌の温存療法後,真の再発ではなく新しい乳癌ができることによって局所再発率が高くなっているというものです.乳房温存手術が1986年から始まり,その頃私も癌研で乳腺の世界に踏み入れたので,自らも一緒に歩んできた四半世紀を振り返る形となりました.昔は照射に対して半信半疑だったりして,癌から十分距離を取った切除でした.そして詳細な病理検索で癌の遺残がないと思われるときは乳房への照射を省略してきました.癌研ではいい加減な切除をすれば再発して「癌に嗤われるぞ」という梶谷 鐶 先生の厳しい姿勢が浸透していました.この間に薬物療法が進歩し,放射線治療の有効性も広く認識されるようになったので,正確に切除しようという姿勢は今では嘲笑の種となってしまいました.しかし,取り切れたことを証明するような厳格な姿勢があったからこそ真の再発と新しい乳癌の区別ができ,今回のようなデータが出たと思っております.先人たちのたゆまぬ努力にただただ頭が下がるばかりです.そして外科医として癌に嗤われない姿勢を今後も継承していきたいと私は思っています.

乳癌術後10年以降の晩期再発の予後因子の検討
大橋仁志(東京慈恵会医科大学 乳腺・内分泌外科),他

論文抄録

 当施設において1965年から2001年に乳癌根治手術を行った患者は1,659人である.術後10年以後の再発を晩期再発とし,その再発に関与する因子を検討した.晩期再発は26人(1.6%)であった.@術後10年以後の晩期再発群 A10年以降の非再発群の2 群に分け比較検討を行った.検討因子は,手術時年齢,手術術式,乳癌家族歴,多臓器癌,両側乳癌,臨床病期,リンパ節転移の有無,ER ,PgR ,HER2,Ki67,抗エストロゲン療法,化学療法の項目とした.術後10年以降の晩期再発に関与する因子はER 陽性とリンパ節転移であった.
受賞の言葉
東京慈恵会医科大学 乳腺・内分泌外科

大橋仁志 先生

 この度は第9 回「乳癌の臨床」賞の優秀賞を頂きまして,大変光栄に思っております.晩期再発を起こす乳癌の生物学的特性に疑問を持っていました.
 今回の論文の対象は,当施設で手術を行い10年以上経過後に再発がみられた26症例です.近年再発した症例に関しては,原発,再発臓器の詳細な履歴がありました.しかし過去の症例に関しては,検討因子の欠損データが多く,1 例1 例の記録を見直すことから始まりました.カルテおよび病理結果報告書,検体のブロック,手術記録が整理された状態であり,昭和40年までさかのぼり再検索を行うことができました.幸い慈恵医大では,昭和50年代初頭からER とPgR の測定を始めていたことも本研究の完成につながりました.
 昨今,手術症例の登録やがん登録が全国規模で実施されるようになりましたが,改めて正確な記録を保存する大切さを痛感しております.今後も諸先輩方が残された記録資料を発展させる仕事ができたらと考えております.
 最後になりましたが,病理学教室,血液・腫瘍内科,乳腺・内分泌部門の関係者,また統計処理のお手伝いを頂きました公益財団法人 明治安田厚生事業団の先生方にも受賞のご報告とともに御礼申し上げます.ありがとうございました. 

*本誌では今年も第十回「乳癌の臨床」賞を選考いたします.日頃の研究成果を是非本誌へご発表ください.

「乳癌の臨床」編集部


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