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「患者のための医療」へ戻る 医療判例ダイジェスト Digest 2002年10月〜2002年12月分 39件* ■1 子宮収縮剤投与中に母体がショック様の症状を呈したことから緊急帝王切開で 娩出された児が死亡し、母体に子宮腔癒着症が生じたことについて、医療機関 の責任が否定された事例 ●H12.2.24 静岡地裁判決 請求棄却・控訴(後控訴棄却・確定) 判例タイムズ1098-200 ●当事者 患 者:新生児(男児)、30歳代女性 医療機関:清水市立清水総合病院 ■2 内視鏡による前立腺切除術後の出血に対して内視鏡的止血を試みた際、外尿道 括約筋が損傷されて尿失禁が生じたことについて、開腹手術への切換えを怠った 過失が認められた事例 ●H12.3.30横浜地裁川崎支部判決 一部認容・確定 判例タイムズ1101-232 ●当事者 患 者:男性 医療機関:医療法人社団亮正会開設の総合病院 ■3 子宮頚管熟化剤注射後、急速に子宮口が全開大となって遅発一過性徐脈が反復 したケースにおいて、吸引分娩の選択とその手技に問題はないとした事例 ●H12.5.8神戸地裁判決 請求棄却・確定 判例タイムズ1102-240 ●当事者 患 者:新生児(男児) 医療機関:医療法人社団山崎産婦人科医院 ■4 出生した新生児に落陽現象や呼吸障害等が見られたのに、高次医療機関への転 送要請が遅れたために脳性麻痺等が残存した事例(裁判所が訴訟の遅延を自己批判) ●H13.5.30 東京高裁判決 原判決変更・一部認容・上告受理申立後和解 判例タイムズ1095-225 判例時報1794-57 (本誌1巻4号p699にて既掲載) ■5 経尿道的前立腺剥離切除術(TUE)の際に括約筋が損傷されて尿失禁が生じたこ とについて、TUE手技上の過失が認められた事例 ●H13.6.29東京地裁判決 一部認容・控訴 判例タイムズ1099-244 ●当事者 患 者:50歳代男性 医療機関:日本医科大学附属多摩永山病院 ■6 ビルから転落した多発外傷患者が緊張性気胸を発症し、出血性ショックで死亡 したことについて、救急隊員の実施した処置に過失はなかったと判断した事例 ●H13.6.29東京地裁判決 請求棄却・控訴(控訴棄却・上告・上告受理申立) 判例タイムズ1104-162 ●当事者 患 者:50歳代女性 救 急 隊:東村山消防署(東京都) ■7 顔面痙攣に対する神経減圧術後、脳内に血腫が生じて死亡したことについて、 救命のための小脳半球切除術を実施しなかった過失があるとされた事例 ●H13.7.26大阪高裁判決 原判決変更、一部認容・上告 判例時報1797-51 ●当事者 患 者:40歳代男性 医療機関:神戸大学医学部附属病院 ■8 呼吸器症状、胸部レントゲン写真の結果などから呼吸器感染症を疑って細菌培 養検査などを実施すべきであったのにこれを怠った責任があるとされた事例 ●H13.9.25さいたま地裁判決 一部認容・控訴 判例時報1795-131 (本誌1巻2号p273に既掲載) ■9 旧厚生省生物製剤課長が非加熱第IX因子製剤の製造中止・回収等を指示しなか ったため、食道静脈瘤硬化療法に際して同製剤の投与を受けた患者がHIVに感染 して死亡したことについて、業務上過失致死罪の成立を認めた事例 ●H13.9.28東京地裁判決 有罪(一部無罪)・控訴 判例タイムズ1097-84 判例時報1799-19 ●当事者 被 告 人:旧厚生省薬務局生物製剤課長 被 害 者:A(血友病患者)、B(食道静脈瘤患者) ■10 脳腫瘍で来院した患者を摘出術実施可能な医療機関に緊急転送させず、1週間 後に予定した他院への定時入院まで脳圧降下剤を投与しながら経過を観察すれ ば足りると判断したことが過失にあたるとされた事例 ●H13.10.16東京高裁判決 原判決変更、一部認容・確定 ●当事者 患 者:女性 医療機関:秋本脳神経外科 ■11 右上背部のベッカー母斑の除去手術の際、広背筋皮弁移植が併用されたために 筋力低下等が生じたことについて、広背筋皮弁移植に関する具体的な事前説明 が欠けていたとされた事例 ●H13.12.17東京地裁判決 一部認容・確定 判例タイムズ1102-231 ●当事者 患 者:男性 医療機関:防衛医科大学校病院 ■12 術後の経過観察が不十分であったため、舌癌手術後に気道閉塞に陥って死亡し た事例 ●H13.12.20千葉地方裁判所 一部認容・控訴 判例タイムズ1104-244 (本誌1巻2号p285に既掲載) ■13 インフルエンザ様の症状を呈した患者(花粉症の既往あり)に対し、デキサン 及びノイロトロピンを静脈注射した直後にショックが生じて死亡したケースに ついて、両剤を投与したこと自体に合理性がないとして過失を認めた事例 ●H14.1.16大阪地裁判決 一部認容・確定 判例時報1797-94 ●当事者 患 者:30歳代女性 医療機関:外科診療所 ■14 看護師が右腕肘関節上部外側に点滴針を刺入したという過失によって、右橈骨 神経不全麻痺が生じた事例 ●H14.3.15名古屋地裁判決 一部認容 判例時報1796-132 (本誌1巻3号p501に既掲載) ■15 術前の生検でグループVの胃がん(癌であることが確実)と診断されて胃等の 摘出手術を受けたところ、術後に病変は胃潰瘍だったと判明したケースについて、 術前病理診断上の注意義務違反を認めた事例 ●H14.4.23福岡地裁小倉支部判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:50歳代男性 医療機関:北九州市立の病院 ■16 耳下部軟骨肉腫腫瘍摘出術終了後、手術創からの出血が気道を圧迫閉塞して患 者が死亡したケースについて、気管切開が遅れた過失を認めた事例 ●H14.4.24東京高裁判決 原判決変更・一部認容 判例時報1799-114 ●当事者 患 者:20歳代男性 医療機関:旧国立東京第二病院(現国立病院東京医療センター) ■17 詐病であると認識しながら四肢麻痺であるとの診断書を作成した医師に対して、 5000万円の賠償が命じられた事例 ●H14.4.25大阪地裁堺支部判決 請求認容・控訴 判例時報1798-102 ●当事者 原 告:明治生命保険相互会社 被 告:近畿大学医学部附属病院神経内科医局長(当時) ■18 胃がんが肝臓に転移した患者ついて、術中所見から肝切除が可能と判断して予 定外の肝切除を試みたが、術中に左肝静脈を損傷したため術後肝不全で患者が死亡し たケースについて、手術手技の誤りがあったと認定した事例 ●H14.5.21福岡地裁小倉支部判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:50歳代女性 医療機関:株式会社立病院(H9年に医療法人化) ■19 品胎(三つ子)の第三子に麻痺等が残存したことについて、個人産科診療所で 品胎の分娩を取り扱った点や娩出後の他院搬送が約6時間遅れた点に過失を認 めた事例 ●H14.7.17新潟地裁長岡支部判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:新生児 医療機関:産婦人科診療所 ■20 小脳虫部の脳腫瘍(神経膠芽腫。大きさ2cm〜3cm程度)がCT読影時に見落とさ れた事例 ●H14.7.18新潟地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:40歳代女性 医療機関:地方公共団体立病院 ■21 腓骨骨折で入院中の患者が急性肺血栓塞栓症で死亡したことについて、整形外 科医が内科医との相談等を怠った過失はあるとしたが、死亡との因果関係を否 定した事例 ●H14.8.9千葉地裁松戸支部判決 請求棄却 ※ ●当事者 患 者:20歳代男性 医療機関:私立病院 ■22 肺癌の診断に遅れはなく、専門病院への転医勧告の内容にも問題はなかったと された事例 ●H14.8.28名古屋地裁判決 請求棄却 ※ ●当事者 患 者:50歳代男性 医療機関:北医療生活協同組合北病院 ■23 死体解剖保存法17条に基づく病理解剖では、遺族の承諾を得て保存された標本 について遺族から引渡しが要求された場合でも、医療機関に標本返還の義務は ないとした事例 ●H14.8.30東京地裁判決 請求棄却・控訴 判例時報1797-68 ●当事者 患 者:60歳代女性 医療機関:自治医科大学附属病院 ■24 経皮的冠動脈形成術(PTCA)の際、ガイドワイヤーで右腎実質内の血管を損傷 したことが原因で生じた出血の持続が見落とされたため、患者が死亡した事例 ●H14.9.4松江地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:女性 医療機関:松江赤十字病院 ■25 不妊治療(HCG-HMG)によって卵巣過剰刺激症候群となって入院した患者がアル ブミン製剤の過剰投与による肺水腫で死亡した事例 ●H14.9.13 新潟地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:30歳代女性 医療機関:国立病院、県立病院(上越市内) ■26 カテーテル脱落による出血事故において、患者自身が接続部を外した可能性を 否定できないとして医療機関の責任を否定した事例 ●H14.9.20名古屋地裁判決 請求棄却 ※ ●当事者 患 者:30歳代男性 医療機関:名古屋第二赤十字病院 ■27 美容手術(隆鼻手術、下顎形成術)後の不具合について、術前に説明を欠いて いたとして過失を認めた事例 ●H14.9.24広島地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:30歳代女性 医療機関:形成外科診療所 ■28 左眼硝子体手術後に発熱を繰り返して死亡した患者の死因は骨髄異形成症候群 等であって、手術等を契機とした感染症ではないと認定し、医療機関の過失を 否定した事例 ●H14.9.24神戸地裁判決 請求棄却 ※ ●当事者 患 者:60歳代男性 医療機関:近畿中央病院 ■29 トルエン中毒で搬入された患者の左上肢腫脹に対して内圧測定による確定診断 及び筋膜切開を怠ったため、コンパートメント症候群による障害が残存した事例 ●H14.9.25仙台高裁判決 原判決変更・一部認容 ※ ●当事者 患 者:30歳代男性 救急隊:石巻消防署 医療機関:石巻赤十字病院 ■30 帝王切開で出生した新生児が呼吸障害で死亡したケースについて、転院措置や 呼吸管理に問題はなかったとした事例 ●H14.9.25東京地裁判決 請求棄却 ※ ●当事者 患 者:新生児 医療機関:産婦人科診療所、東京都立八王子小児病院 ■31 診療当時乳癌の治療として未確立だった術式(乳房温存療法)について熟慮の 機会を得られなかったことに関する慰謝料を100万円と算定した事例 ●H14.9.26大阪高裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:40歳代女性 医療機関:診療所(大阪府泉佐野市内) ■32 経皮経胆管胆道ドレナージのチューブが逸脱したため、膵頭癌患者が胆汁性腹 膜炎を発症して死亡したことについて、チューブ管理が不適切であったとした事例 ●H14.9.26大阪地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:70歳代男性(内科開業医) 医療機関:財団法人日本生命済生会附属日生病院 ■33 腰部手術後の手術創デブリドマンの際に置かれたシリコンチューブ(5cm)が 37日間にわたって遺留されたことにつき、慰謝料額が争われた事例 ●H14.9.27青森地裁弘前支部 一部認容 ※ ●当事者 患 者:50歳代男性 医療機関:国立病院 ■34 緊急帝王切開で出生した児が死亡した事例について、手術室確保等の胎児仮死 疑いに対する準備開始が遅れた過失及びクリステレル圧出法を相当回数以上に 反復した過失を認定した事例 ●H14.10.8大阪地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:新生児(男児) 医療機関:吹田市民病院 ■35 心筋梗塞で入院中の患者にミリスロールの過剰投与がなされたケースについて、 シリンジポンプの薬液交換を行った看護婦の過失等を認めたが、死亡との因果 関係を否定した事例 ●H14.10.11神戸地裁判決 請求棄却 ※ ●当事者 患 者:男性 医療機関:兵庫県立柏原病院 ■36 前立腺切除術後に不明熱を発した患者の死亡について医療機関に責任はないと した事例 ●H14.10.30東京地裁判決 請求棄却 ※ ●当事者 患 者:70歳代男性 医療機関:東京逓信病院 ■37 3名の医師がいずれもくも膜下出血の見落としたため、患者が死亡した事例 ●H14.10.31名古屋高裁判決 原判決変更・一部認容 ※ ●当事者 患 者:50歳代女性 医療機関:春日井市民病院 ■38 大動脈弁閉鎖不全症を基礎疾患とする患者の感染性心内膜炎の診断が遅れた ため、細菌性脳動脈瘤が破裂して後遺症が残存した事例 ●H14.11.21東京地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:20歳代学生 医療機関:病院 ■39 グラスを持ったまま転倒して負傷した患者の手から、約9年後になってガラス 片が発見されたケースについて、負傷直後に診察した2つの医療機関にレント ゲン撮影を怠った過失があると認めた事例 ●H14.11.26札幌地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:不詳 医療機関:札幌市中央区内の2医療機関 ■40 33週5日で帝王切開にて出生した児に生じた脳性麻痺の原因は低酸素症では なく脳室周囲白質軟化症であるとして、医療機関の責任を否定した事例 ●H14.11.26名古屋高裁判決 請求棄却 ※ ●当事者 患 者:新生児 医療機関:岐阜市民病院 「患者のための医療」へ戻る |
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