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「患者のための医療」へ戻る 医療判例ダイジェストDigest 2003年4月〜2003年6月分 31件* 堀 康司(弁護士) ■1 腎盂腎炎による敗血症で死亡したことについて、腎盂腎炎の見落とし等を認定 しながら因果関係を否定し、適切な治療を受ける権利を侵害された精神的損害 のみの賠償を命じた事例 ●H12.10.17那覇地裁判決 一部認容・控訴(後控訴棄却、上告・上告受理申立) 判例タイムズ1111-172 ●当事者 患 者:60歳代女性 医療機関:医療法人友愛会豊見城中央病院 ■2 交通事故で搬送された患者が治療を拒否し、医師の説得を振り切って退院した 後に死亡したことについて、医療機関の責任が否定された事例 ●H13.4.19 札幌地裁判決 本訴反訴とも棄却・控訴(後控訴棄却・確定) 判例時報1756-121 判例タイムズ1116-249 ●当事者 患 者:男性 医療機関:札幌東徳洲会病院 (本誌1巻1号p81にて既掲載) ■3 インフルエンザ様の症状を呈した患者(花粉症の既往あり)に対し、デキサン 及びノイロトロピンを静脈注射した直後にショックが生じて死亡したことについて、 両剤を投与したこと自体に合理性がないとして過失を認めた事例 ●H14.1.16大阪地裁判決 一部認容・確定 判例時報1797-94 判例タイムズ1114-259 ●当事者 患 者:30歳代女性 医療機関:外科個人診療所 (本誌5号p88にて既掲載) ■4 ビタミンB1の補給をしないで高カロリー輸液を実施したことによって ウェルニッケ脳症を発症させた責任が認められた事例 ●H14.1.16東京地裁判決 認容・確定 ※ 判例タイムズ1114-250 ●当事者 患 者:80歳代男性 医療機関:東京大学医科学研究所附属病院 (本誌1巻2号p275にて既掲載。なお裁判所サイトでは判決日はH13.10.3とされた) ■5 医師が経口抗真菌剤イトリゾールの副作用(催奇形性)を説明しなかったため に人工妊娠中絶を余儀なくされたことについて、説明義務違反を認めた事例 ●H14.2.8大阪地裁判決 一部認容・確定 判例タイムズ1111-163 ●当事者 患 者:20歳代女性 医療機関:産婦人科個人診療所 ■6 急性喉頭蓋炎の見落としによって四肢麻痺等が残存した事例 ●H14.3.13東京地裁判決 一部認容・控訴 判例時報1812-116 ●当事者 患 者:50歳代男性 医療機関:国立大蔵病院 ■7 脳血管造影検査後に脳出血で死亡したことについて、造影中の意識状態悪化に も関わらず、脳出血の可能性を否定しないまま血栓溶解剤を投与して検査を 続行した過失を認めた事例 ●H14.8.29高松高裁判決 原判決一部変更・確定 判例時報1816-69 ●当事者 患 者:80歳代男性 医療機関:高知医科大学附属病院 ■8 経皮的冠動脈形成術(PTCA)の際、ガイドワイヤーで右腎実質内の血管を損傷 したことによる出血の持続が見落とされて患者が死亡した事例 ●H14.9.4松江地裁判決 一部認容 ※ 判例時報1815-116 ●当事者 患 者:60歳代女性 医療機関:松江赤十字病院 (本誌5号p95にて既掲載) ■9 薬疹によって中毒性皮膚壊死症を生じたことについて、処方した診療所と転院 先の病院の双方に、過失も説明責任違反も認められないとされた事例 ●H14.9.11東京高裁判決 原判決一部取消・上告 判例時報1811-97 ●当事者 患 者:40歳代女性 医療機関:耳鼻咽喉科診療所、川口工業総合病院 ■10 診療当時乳癌の治療として未確立だった術式(乳房温存療法)について熟慮の 機会を得られなかったことに関する慰謝料を100万円と算定した事例 ●H14.9.26大阪高裁判決 一部認容 ※ 判例タイムズ1114-240 ●当事者 患 者:40歳代女性 医療機関:診療所(大阪府泉佐野市内) (本誌5号p99にて既掲載) ■11 医師資格なくレーザー脱毛サロンを経営した夫婦を医師法違反とした事例(刑事事件) ●H14.10.30東京地裁判決 有罪・確定 判例時報1816-164 ●当事者 被告人:脱毛サロンを経営する夫婦(東京都港区芝) ■12 フェノバールの副作用による薬疹を発症し、スティーブンス・ジョンソン症候群 を経て視力障害を起こしたことについて、過失を否定した高裁判決が破棄された事例 ●H14.11.8最高裁第二小法廷判決 原判決破棄差戻 判例時報1809-30 ●当事者 患 者:19歳男性 医療機関:私立病院 ■13 心臓バイパス術後、カンジダ菌に感染した患者の真菌性眼内炎の発見が遅れた ため、両眼失明に至った事例 ●H15.2.20名古屋高裁判決 原判決変更・一部認容 ●当事者 患 者:50歳代男性 医療機関:岐阜大学医学部附属病院 ■14 医療保護入院の手続に過誤がなかったとされた事例 ●H15.2.20岡山地裁判決 請求棄却 ※ ●当事者 患 者:20歳代女性 医療機関:山陽病院 ■15 扁桃摘出術後6日目に内頚動脈の破綻による大出血で死亡したことについて、 術中に筋層を損傷した上、モノポーラ型電気凝固器によって深部まで熱侵襲を 与えた手技上の過失を認定した事例 ●H15.2.24東京地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:40歳代男性 医療機関:病院 ■16 竹の切り株を踏んだ際の刺創によってガス壊疽に陥り、下肢切断に至ったこと について、竹片残存を見落としガス壊疽治療のための転院が遅れた過失を認めた事例 ●H15.3.12千葉地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:10歳代男性 医療機関:地方公共団体組合立病院(千葉県内) ■17 肺癌精査の要否に関する説明が不足したために治療に関する自己決定の機会を 失ったことにつき、慰謝料を認容した事例 ●H15.3.13東京地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:70歳代男性 医療機関:病院 ■18 抑うつ状態で開放病棟に入院中の患者が離院して凍死したことについて、 病院の責任を否定した事例 ●H15.3.19新潟地裁長岡支部 請求棄却 ※ ●当事者 患 者:30歳代男性 医療機関:私立病院 ■19 ジャクソンリースと気管切開チューブの接続不具合による換気不全で患児が 死亡したことについて、両器具について指示・警告上の欠陥を認定した上で、 両器具メーカーと病院の連帯責任を肯定した事例 ●H15.3.20東京地裁 一部認容 ※ ●当事者 患 者:新生児 医療機関:都立豊島病院 メーカー:アコマ医科工業、タイコヘルスケアジャパン ■20 脳梗塞急性期の患者が左片麻痺等に陥ったことについて、アルマール、 アダラート等によって著しく血圧を降下させた過失を認定した事例 ●H15.3.27新潟地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:50歳代男性 医療機関:私立診療所 ■21 薬剤師らからの過量との指摘を無視して通常の約9倍のプレドパの点滴が 行われたため、患者が過量点滴による急性肺水腫で死亡した事例(刑事事件) ●H15.3.28新潟地裁判決 有罪 ※ ●当事者 患 者:85歳女性 医療機関:私立病院(三条市内) ■22 人工股関節置換術後に筋力低下等が残存したことについて、手術適応の判断を 誤った過失を認めた事例 ●H15.3.28新潟地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:50歳代女性 医療機関:病院(北蒲原郡内) ■23 大腸内視鏡検査によって癒着が剥がれて穿孔が生じたことについて、説明義務 違反についての慰謝料を認めた事例 ●H15.4.2岡山地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:70歳代男性 医療機関:病院 ■24 糖尿病ケトアシドーシスに対する輸液不足によって患者が死亡した事例 ●H15.4.11前橋地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:20歳代男性 医療機関:医療法人高木会高木病院 ■25 感冒症状のため肺炎の疑いで入院した患者が急性心筋炎を見落とされて死亡した事例 ●H15.4.18 徳島地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者: 医療機関:私立病院(麻植郡内) ■26 陰茎の長茎術及び増大術を受けた後、再三にわたって手術を繰り返した (後に患者は自殺)ことについて、手術に関する説明義務違反を肯定した事例 ●H15.4.22東京地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:30歳代男性 医療機関:私立美容外科診療所 ■27 非イオン性ヨード造影剤によるアナフィラキシーショックによって死亡した ことについて、問診義務違反を認めた事例 ●H15.4.25東京地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:30歳代男性 医療機関:大学病院 ■28 B型肝炎ウィルスに感染していた非ホジキンリンパ腫の患者が化学療法に よる劇症肝炎で死亡したことについて、化学療法の中止という選択肢が存在 することについての説明義務違反を認めた事例 ●H15.4.25大阪地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:50歳代男性 医療機関:大阪市立総合医療センター ■29 白内障術後に生じた網膜剥離に対する緊急手術が実施されなかったために 視力低下、視野狭窄が残存した事例 ●H15.5.7東京地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:70歳代男性 医療機関:防衛医科大学校病院 ■30 患者が精神病院において抗精神病薬を機械的に大量投与され、麻痺性イレウス に対する治療を受けることができずに死亡した事例 ●H15.5.30大阪地裁判決 請求認容 ※ ●当事者 患 者:20歳代男性 医療機関:医療法人北錦会大和川病院 ■31 乳児が髄膜炎菌を原因とする敗血症で死亡したことについて、細菌感染 との判断が遅れたために延命可能性が侵害されたとした事例 ●H15.6.3東京地裁判決 一部認容 ※ ●当事者 患 者:男児(生後3カ月) 医療機関:日本赤十字社医療センター 「患者のための医療」へ戻る |
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